滞在制作レポート

▶︎ピアニストの本田素子さん

▶︎滞在制作をしてみたい方、または、どんな様子なのかを知りたい方は、是非お読みください。
沼タイズコミュニティと滑川での暮らしがインタビューから見て取れます

質問:
滑川町で行われている「沼と生物多様性を主題とした滞在制作」に関心を持った背景を教えてください。

本田さん答え:

28年の海外生活、そしてそのほとんどを都市で過ごしてきた自分が、生まれ故郷であ
る日本文化や歴史に再び触れたくなってきた、そして自然のある生活に魅力を感じ始め
てきた時期に、Creative Power Garage 101 のお話を聞いてとても魅力を感じまし
た。日本で育った時の良い思い出は、ほとんどと言って良いほど、夏休みや休暇などに
自然のある環境で出来たものなのですが、演奏家、作曲家となってから日本の田舎に行
く機会もなく、大人になった自分がどのような視点で日本の文化と自然と再会する事に
なるのか、そしてそこから生まれる作品と共に、芸術家として変化するであろう自分自
身にも興味がありました。

質問2)
実際に滞在した中で、アートコーディネーターを通じて出会った方は滑川町でどんな活動をされている方でしたか。

答え:
• 滑川町で生まれ育った高柳茂さんは歴史学者であり、滑川町に関する詳しい書籍
も出版されている方でした。
• 嵯峨創平さんは、オーストラリアのアボリジニ発祥の、文化や歴史や社会の知恵
を伝承する口語りのスタイル、 ソングラインの滑川町バージョンを創作し、比
企丘陵(ひききゅうりょう)ソングラインとして、ツアーを滑川町で行っている
方でした。
• 平山万左子さんは、滑川町在住の伝統的な薩摩琵琶奏者の方で、長年演奏、録音
などをされてきた方でした。
• 木村京子さんは、香育屋Kyokoさんとして香りを基に制作、活動をされているア
ロマブレンドデザイナー、アーティストさんです。東京にお住まいですが、滑川
町に多々通って滑川に基づいた香りなどを制作されている方でした。


質問3)出会った方からどんな情報やインスピレーションを得ましたか?

高柳茂さんには滑川エコミュージアムで合流し、当ミュージアムの案内をして頂くと共
に、滑川町の歴史や自然のお話をしていただきました。滑川町で発見された札太政官高
札(だじょうかんこうさつ)お話しや、絶滅寸前のミヤコタナゴという天然記念物の淡水
魚の飼育、繁殖現場などの観察を一緒にして下さいました。滑川町を知るとてもよいイ
ントロダクションとなり、特に盛えていた五世紀ごろの滑川町のイメージが意外で、そ
の歴史の壮大さに想像が膨らみました。
嵯峨創平さんには、自転車で滑川町を周り、時が経つにしたがって変わりゆく風景を眺
めながら、比企丘陵ソングラインツアーをして頂きました。

滑川町独特の沼の歴史や自
然のお話が、物語で語られる事で、楽しく、そして体や心にすっと入ってくるようで、
滑川町との関わりが深く感じる事ができました。
平山万左子さんとは、彼女の練習の様子を聴かせていただくと共に、実験的なコラボ即
興演奏をキーボードと琵琶で一緒に行ったりしました。日本文化の素晴らしさを再発見
すると共に、長年芸術家として生きていく事、そしてその姿勢の新鮮さがとても魅力的
でした。


木村京子さんは、私の好きな香りの専門家で、香りそのもののお話は勿論、彼女自身の
香りの創作スタイルや、プロセスなどを教えていただき、香りの知識が広がると共にこ
れから沢山のコラボレーションや創作の可能性のインスピレーションをいただきまし
た。

質問
4)本田さんが出会った方や調べたことの中から特に印象に残った文化、活動、歴史があれば教えてください。

やはり、滑川町独特の、沼を使った米栽培の歴史と文化、そしてそれを今でも大事に生
かし続けている、滑川町の食文化と人模様にとても魅力を感じました。栄えていたであ
ろう五世紀頃の雰囲気と、今の田園が広がる風景など、壮大な歴史を感じさせられたの
も印象に残りました。


5)で印象に残ったことは、これからの作品制作や旅先での演奏活動にどのような
影響を与えてくれたら嬉しいと考えますか。
すでに決まっている活動発表の場や作品発表を例にとりながら答えてくださっても構い
ません。
比較的短い滞在だったので、滞在中はリサーチに集中しており、滑川町の印象がどの様
な形で作品化されるか、はっきりとはわからなかったのですが、滞在後、出身地仙台で
の演奏のお声がかかった際に、どうしても滑川町の印象を仙台の方々に伝えたいという
思いが強くなりました。その結果、木村京子さんが2022年に滑川町を題材に作成さ
れた”Pondalize 2022”という香りにインスピレーションを受けた音楽を、匂いをかぎ
ながら、このコンサートで楽しんで頂こうという事になり、結構実施しました。


香りを
一人一人に演奏中に楽しんで頂くために試行錯誤しましたが、観客の方々から、こんな
経験をした事がなかった、イメージが広がって楽しかったという、良いコメントを沢山
頂きました。ただ、これは短期間の準備で行ったもので、自分としてはWork in
Progressとしての演奏だったと思うので、さらに滑川町で学んだ事や経験した事を含
ませて、また作曲や演奏に望みたいと思っています。機会があればアメリカでも滑川町
の紹介とその印象から作られた音楽を演奏したいと思っております。


6)滑川で出会った方に一言。
短期間でしたが、暖かく迎えて頂きありがとうございました。そして皆様の知識を惜し
みなく共有して頂きありがとうございました。日本人として再び日本文化と歴史に触れ
合う、そしてしっかりと向き合い始めようとしている自分にとって、とても素晴らしい
経験となり、沢山のインスピレーションを頂きました。またお会いできる事を楽しみに
しております。


7)こんなものがあったらまた来たい、と思える提案があればどうぞ。
もっと滑川町在住の方々、近所の方々や、農家の方や食に関わる方々とも直接お話しし
たかったなと思いました。沼に関わる活動、田植えや、山上りなど自然に関わる活動
も、もっとしたかったなと思いました。
また来れる機会があれば嬉しいです。

本田素子さん、ご滞在ありがとうございました。
今回、本田さんが滞在いただいたのは冬でしたが、
春から秋にかけては、自然に携わる沼さんぽや田植え、稲刈り等を沢山実施しています。

冬の自然アクティビティを探すのも楽しそうですね。
滞在中盤で行った焚き火を囲みながらのBBQは、
寒かったですが、ローカルフードを摘みつつ、
お酒もすすみ、楽しい思い出です。

また、ぜひ、季節を変えてきてくださいませね!
お待ちしております。